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2016年3月22日 (火)

宝塚海軍航空隊 栗山良太郎

宝塚海軍航空隊  栗山良太郎

太平洋戦争末期に宝塚歌劇の大劇場が海軍の基地として終戦まで接収されていました。
この本はその宝塚海軍航空隊の歴史小説です。

まずプロローグに三つの話がある。
一つは宝塚歌劇団の組長の話、もう一つはおそらく元宝塚航空隊の人の想い出、そして最後に海軍下士官の益田勝男の日記の一部。

この物語は僕はジャンル分けするとすれば「歴史小説」というくくりになるのではないかと思う。
この小説は、プロローグの最後の益田下士官の日記をもとに作者の栗山氏が物語に仕上げたものだと思うからです。

なぜこんなことを書くのかといううと、この本は作者の解説的なものが一切ない!
「はじめに」とか「あとがき」とか「注」とかがないのですよ、だから作者がどういう経緯で宝塚海軍航空隊のことを書こうと思ったのかや、益田氏の日記にどうして巡り合ったのかや、登場人物の名前が実名なのか仮名なのか、そういうことすら一切説明がないから想像するしかない。

一般的でない言葉には”注”をつけたり、本文中に説明文的なものを書いたりしてくれる小説も多いと思いますが、この栗山氏の宝塚海軍航空隊ではそういう説明もないので、結構理解しにくいところもありますね。漢字の使い方も今ではほとんどひらがなで表現するようなあまり使われない漢字が使われていて結構難しい。

たとえば「甲板掃除」「半舷上陸」などという言葉が出てきますが、最初ちょっとわからなかった。
これは海軍用語ですが、陸上の部隊なのになんで?と思ったんですが、おそらく海軍では地上勤務でも訓練休日で部隊から出て下宿先や家に帰ることを「上陸」と言い、部隊兵舎の掃除のことを「甲板掃除」と言うんですね。

終戦の約一年前の昭和十九年六月ころから昭和二十年八月十五日あたりまでの益田下士官の宝塚海軍航空隊の生活が描かれています。

これを読むと終戦一年ほど前から急激に日本の戦況が悪化して、無理な兵員募集を掛け始めたのがこの頃だったのだなとわかります。

登場人物は益田下士官を中心に練習生、班長仲間、上官、両親等でそれほど多くはないと思うのですが、それぞれに濃い物語がありますね。
先にも書きましたが、この物語は、益田下士官の日記をもとに作者が話を肉付けして作られてます。日記というのは、プロローグで一部紹介されてますが、「何月何日、こういうことがありました」くらいしか書いてないことが多いと思うのです。
日記にいちいち「私はそのときこう言った」とか「彼の気持ちはこうであった」などとは絶対書いてない。
そういう断片的な日記による情報からだけでこの物語を作ってるのだから、やっぱりこの「小説」はそういう意味で読みごたえがありますね。

しかし、読んでいると、あまりにリアルな情景描写に、益田下士官や登場人物で戦争を生き残った人に取材して書いたんだろうなと思えてくる。
実際何人かは小説ができた時点で生存されてるようなので、その方たちへ取材された内容も反映されてると思いますが、いちばん肝心の主人公には取材してない・・・

宝塚に海軍の航空隊の訓練基地が歌劇場に設置されていたというのもびっくりですが、戦時中の日本で、戦争と全く無縁な場所なんてなかったという方が正しいのでしょうね。

そして終戦を迎えたときの帝国軍人と民間人とではその思いが全く違っていたんだなというのがわかりますね。

もう戦後の痕跡なんて日常で見ることはないわけですが、地元宝塚でもこういうことがあったという歴史は忘れずにいたいですね。

追記:木下氏の「宝塚最後の予科練」を読んでの感想ですが、歴史小説より宝塚海軍航空隊を舞台にした”小説”という位置づけの方が良いのかな?
上にも書いてますが本書は注やあとがき等がなくて、作者がどういう風にこの小説を書いたのかわからない。だから今思うと登場人物の名前等はほとんど仮名かな?
フィクションの部分が多いとしても宝塚にあった海軍航空隊の生活と鳴門事件についてしっかり読者に読ませる物語としては良い話だと思います。
それに全く作り話ということでもなくて、やはり宝塚海軍航空隊のことを知るにはいい本だと思います。なにより読みやすいです。

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